カウンセリングの現場では
さまざまなお話をお伺いしますが、
対人関係云々、というよりも「精神的に疲労しきっている」状態で
ご相談に来られる方もけっこういらっしゃいます。
そんなに仕事が忙しいわけでもないし
休日だってちゃんとあるのに、なんかクタクタ。エネルギー切れ。
こういうときにはね「肉体」よりも「精神的な疲労」が
蓄積されっぱなしのことが多いのですね。
感情労働、という働き方
みなさんは「感情労働」という言葉を聞いたことがありますか?
感情労働、というのは、とある社会心理学者さんが唱えた考え方で
とってもとっても簡単にご説明すると
業務にあたり、自分の感情をコントロールしたり
抑圧をせざるを得ないようなお仕事のこと。
をいいます。
たとえば、手痛い失恋や大切な人と喧嘩した翌日でも
接客業をしている方というのは「笑顔で元気に」働くことを求められますよね。
機嫌が悪い、調子が悪い、ということは
人間誰しもあるけれど・・そこをグッと耐えて、「OO店の店員さん」として笑顔で接客をする。
接客業って、お客様にいい気分になってもらう。
満足してもらうということが、お仕事ですからね
そのためには、どうしても、自分の不満や揺らぎをコントロールせざるを得ないわけです。
単に「頭や体をつかった労働」だけではなく
自分の感情のコントロールという労働も加わるわけですね。
これは接客業だけでなく、医療や介護、教員、営業、サポートセンター
部下と上司の間を取り持つ、中間管理職などなど多岐にわたります。
「先生として」「上司として」「医者として」「社長として」「介護者として」
自分の感情がどうあっても、相手の感情を優先させて
あるべき行動、あり方を示し続けなければいけない。
イラッとしたり、落ち込んだりすることがあっても、
できるだけ平然を装い、相手の感情に寄り添い、誠実な対処をする。
自分の感情は横に置き
目の前のお客さんのために、患者さんのために、精一杯こころを砕く。
「お仕事だし当たり前じゃん!」って感じる方も多いかもしれませんが
実は「感情労働」って、大変なことだったりするわけです。
*
私は、ずーーっと接客をやってきた人なのですが
感情労働という言葉に出会うまでは
「え?なにそれ?そんなのやって当たり前じゃないの?」ぐらいに思っていたんですよね。
そんなの仕事のうちであり、
やって当たり前、そこに価値ってあまりないよねって。
この部分ってね、いままであまり注目もされてこなかったと思うのですよ。
仕事をたくさん取ってくる。頭がいい。作業が早い。
そういう「頭」や「体」の労働は分かりやすく、評価されやすいけれど
人の気持ちを汲んだり、周りのために自分の感情をコントロールする感情労働って、
その人自身にしか、努力が見えなかったりしますからね。
とくに感情労働を選択されている方ってね
使命感を持ってその職に就いている方も多いので
あまり周りに愚痴をこぼさず、一人で立ち向かっている方も多いのです。
「そんなことで疲れているのがおかしい」
「この仕事についているのだから、自分を律することは当たり前」
だからこそ、なのでしょうか。
仕事での燃え尽きを感じている方、というのは
この「感情労働」で疲弊している方がものすごく多いのです。
その仕事に思い入れがあるからこそ・・
誠実で実直だからこそ、頑張りすぎて疲弊してしまう。
体を休めてもすっきりしない。
急に全てが「嫌」になる。
こういうことが、起きやすくなるわけですね。
*
とはいえ「だったら、気ままに仕事したらいいじゃん!」とは・・・いかないですよね^^;
人は人、私は私、人の感情なんて興味ありません!と思えたらいいのかといえば、
楽かもしれないけれど・・なりたい自分でもなかったりしませんか?
元々、人と自分との区別がはっきりしている、ドライな方もいますし
それがいい悪いということではないのですが
多分、感情労働に興味があるあなたが本当にやりたいこととは違うと思うのです。
本当は、もっともっとお客様を喜ばせたい。
気持ちに寄り添ってあげたい。力になりたい。
使命感を持ってお仕事をされている方も多いですよ。
だからこそ、あなたがあなたを救う方法
「ストレスを溜めにくくする方法を身につける」のが大事になってきます。
今日は少し、ストレスを溜めにくくする方法を
心理カウンセラーの視点からご紹介しますのでね〜
良かったらお試しくださいね。
自分だけの時間を確保する
たとえ10分でもいいので、自分一人の時間を確保して好きなことをする。
ぼーっとする、という時間を作ってみましょう。
感情労働に就いていらっしゃる方、というのは
周りの人の感情に敏感なので、人と一緒にいると「無意識に」人の感情を読んでしまいます。
そのアンテナをオフにするために、すこし、自分だけの時間を日常に作ってみるといいと思います。
カウンセリングなどで、自分の話を聞いてもらうというのも効果的です。
「この時間は、私のための時間」と思える時間を、確保してみてくださいね。
ネガティブな自分にもOKを出す。
私たちには「たくさんの自分」がいます。
どれだけ素晴らしい人だったとしても、
なまけものな自分、意地悪なことを考えてしまう自分、抜けている自分というものも存在するのですね。
感情労働で求められる像は「いい人」が多いため
私生活でも常に「いい人」を演じなければいけないと感じたり
常に前向きに、人に優しくいなければいけない、と感じてしまい
「お仕事の役割」を私生活にまで引き受けてしまう方も多かったりします。
「こんなことを考えてしまうだなんて、教師として失格よね」
「いつでもいい人であらねばいけない」
優しくて思いやりのある方だからこそ、
ネガティブな感情が湧いてきた時にはピンチなわけで
誰かに助けてもらう必要があるわけですが
「そんなこと考えている自分って最低」
と、自分を追い込み
なかなかそういう自分を人に見せれなくなったりすることも多いみたいです。
人に優しくしたい、人を気遣える人でありたい
という気持ちはとってもとっても大切であり、あなたのコアだと思うのです^^
そういう自分を見せたくない、というのもね、
あなたの中の大切な信念だと思うのですが
燃え尽きそうになっている時にはね
人間味あふれる自分にもね、OKを出してあげましょう。
「そう言うふうに感じちゃうよね」
「ネガティブな時もあるよね」
「それでも、愛を選んでいる自分ってすごいんだよ」ってね。
そして、優しい自分をわかってくれる人に
分かち合ってもらうといいと思うのですねー。
思いがあるがゆえに、悩んでいるんだ。
もっともっと目の前の人を愛したいと思うからこそ、悔しいんだ。
ここをわかってくれる人、必ずいますからね。
*
感情労働を引き受ける方というのは
心根が優しく、思いやりのある方が多いです。
適当に仕事なんてしたくない。
目の前の一人一人を大事にしたい。
そんなふうに、一生懸命、取り組んでいらっしゃる方も多いと思います。
愛を選択する、そのコミットは素晴らしいし
あなたの愛で救われている人もたくさんいます^^
だからこそ、あなたがやりたいことのために
あなた自身にも大切にね。
していただけたらなぁと思いますよ。
なかなか、自分に戻れない。
ずっとずっと走り続けているような気がする。
そんなときには、ちょっと意識をして
自分に戻る時間を作ってみるといいと思います。
ただ、自分の話をする。
普段はなかなか出せないような自分を、誰かに受け止めてもらう。
それだけでもね、心ってずいぶん違いますからね。
心のメンテナンスに、カウンセリングもご活用くださいね。
参考になれば幸いです。